第六章
……強制コマンド。
それとなく違和感はあった。高度な魔術であれば此方も魔法術に長けた軍師や魔女を繰り出し対処の仕様があったものを一寸たりとも許されなかったから。
「簡単に言ってくれるな」
ロックマンは苦々しい笑みを浮かべる。
「造作もないことだ」
平然とした顔で。
……彼らが姿を現したというのもただの気まぐれという話でもないのだろう。
「目的を訊ねよう」
群青の瞳が見据えた先には。
「……私の名前はルキナ」
藍色の髪が風に揺れる。
「イーリス聖王国。聖王クロムの娘」
「だが彼女はまだ赤子だろう」
真っ直ぐと。逸らさず見つめ返して。
「はい」
ルキナは答える。
「私はこの世界の未来から来ました」
密かに眉を寄せて。
「世界を滅ぼす絶望の未来から」
はっきりと。
「……皆を救うために」