第六章
「……そう」
何が理解にまで及んだのかクレイジーは納得したように静かな声で。
「……お前がイレギュラーだな」
次の瞬間。
「――ッッ!」
ぐさぐさと突き刺さる紛れもない殺気が全員を襲った。殺気は見えない刃となりほんの一瞬の出来事とはいえ各々の服や頬に小さな切り傷を残して。
彼女、ルキナもその一人だった。
蹴りの一撃を直にお見舞いされたものの地面を跳ねて転がりその何度目かで受け身をとって反動を利用。
跳び上がり、着地をこなしたそののち殺気を受けたが頬の一線に滲む赤を拭ってゆっくりと立ち上がる様は勇ましく。
「……どういう」
思わず口を開いたスピカもこれまでとは異なる雰囲気に口を噤む。
「スピカ」
ふと。
「お前たちは下がっていろ」
下された命令に目を開く。
「どっちみち足手まといだから」
クレイジーが続けて、
「僕も兄さんがいれば充分」
……。連れた部下の具合をちらりと流し見てそっと瞼を伏せる。
腑に落ちない結果と成り果てたが意地を張って残れるような体力も生憎のこと。