第六章



薙ぎ払い、手のひらを差し向けて。

黒い閃光が鳴き声を高く響かせ主の腕の表面を跳ねて次の瞬間には放たれる。


それが彼らの狙いだった。


突如としてスピカ含むダークシャドウを囲うように半径五十メートル程の巨大な魔方陣が足下に広がったのだ。

恐らく一定量以上の魔力放出に反応して発動する拘束トラップ。その効果は範囲内にいる生命体に重力をかけて地に伏せさせ体の自由を奪おうというもの。

「容易いな」

ロックマンは静かに告げた。

「殺れ」

双子軍師の詠唱に従って猛る灼熱の炎が放たれる。

轟々と音を立てるそれは主の意志に従い激しく燃え盛りながら瞬く間に悪の存在との距離を詰めて正義の鉄槌を――


ずだん、と。

既の所で虚空より不意に振り下ろされた巨大な赤黒い斬撃によって攻撃が遮断されたのはもう間もなくのこと。加えて炎は術者の意思とは関係なく途絶え足下の魔方陣さえも消え失せて。

「惜しかったな」
「もう少しだったのにねぇ」

辺りを見渡せど声の主は此処に在らず。

「……まさか」
 
 
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