第六章
一陣の風。木の葉が散る。
太い木の枝のアーチを抜けたが刹那。
「ボルガノン!」
――背後から渦巻く炎の柱による爆撃が襲った。既の所で躱したが激しく燃え盛りながら放たれた炎の風圧により地面に飛び込むような形となってしまう。
「っ、う……」
少年は小さく呻き声を漏らし金色の髪を垂らして上体を起こす。
「そこまでだ」
正義の声に眉をひそめて。
「は。正義のヒーロー様が袋叩きなんざ随分美しくない真似をするじゃねぇか」
「悪の組織様がこの程度で愚痴をこぼすとは聞いて呆れるな」
視線を向けた先で澄んだ青の瞳が此方をじっと逸らさず見据えている。
「……亜空軍所属」
呟いたのは。
「偽物集団『ダークシャドウ』を率いるリーダーのスピカ・リー」
軍師服を身にまとった少女。
「クレシス管理下の息子であるあなたがどうしてこんなことを」
「理由があれば納得したのか?」
名をあてられた少年スピカはゆっくりとその体を起こし嘲るように鼻で笑う。
「到底理解できないな。悪の側が考えることなど以ての外」
ロックマンは静かな口調で答える。
「ご名答」
スピカは口端を吊り上げた。
「初めから分かってもらおうなんざ思っちゃいない。これは俺自身の意志だ」