第五章
閉じた瞼が次に開かれた時。
「……なに」
静かに見据える瞳は。
「言いたいことがあるなら」
「未来が変わってしまうからですか」
見上げるリンクは眉を寄せて。
「……どういうこと?」
カービィは訝しげな顔をして振り向く。
「未来を変えるためだからといって執拗以上に過去に変化を与えると、世界線にずれが生じてしまい最終的に変えるべき未来に影響を及ぼして対処の仕様が無くなるという話です」
リンクはひと息ついて。
「……最もその理屈だとあなた方はどうしても話すつもりがないようですが」
そういうこと。カービィは再びミカゲに視線を移して口を開く。
「で。どうなの?」
「質問には答えられない」
思った通りの回答に眉をひそめる。
「……ただ」
ひと呼吸置いて紡ぐ。
「時間がない、とだけ」
――冷たい風が吹き抜けた。
「ミカゲ!」
影が揺らぐのを目に留めてそれで動こうというのでは流石に遅すぎた。
「っ、」
追いかけるべく踏み出したが直後不意に頬を触れたひと雫に思わず立ち止まってしまう。ぱっと空を見上げたけれど今宵は星々が満月に負けじと輝くばかり。
「陰りもないのに……雨……?」
その小さな呟きに傍らのリンクは密かに目を細めて。
「……行きましょう」
自分たちではなく。
どうして、彼なのだろう。
彼らは何を考えているのだろう。
渦巻く疑念は。
解消されないまま。
世界の。
――崩壊が始まる。