第五章



突然の拍手の音に肩を跳ねた。

「感動的だねぇ」

振り向く。隻腕である彼らが拍手など出来るはずがないと思っていたがどうやら拍手をしていたのは彼らではないまだ黒い煙を揺らめくばかりで形を上手く保てないダークシャドウの新入りだった。

双子の傍らにそれぞれ召使いのようにして立つその二人はあの日見た正義部隊の軍師とよく似ている。名前は……

「うちの我が儘王子がこんなに親孝行に育ってくれるなんてさ」

思わずぞわぞわと鳥肌が立った。

「里親ってやつ?」

と。返すより先に次の瞬間には目の前に現れて顔を近付けるのだから驚いた。

「なんてね」

クレイジーは不敵に笑って離れる。

「――ご報告します」

不意に無の空間から黒い羽根を散らせて降り立ったのはダークピット。

「どうだった?」
「はい。白煙を上げなかった国は離れの小さな村を含めても十に満たないかと」

クレイジーは小さく息をついた。

「それじゃ拍子抜けだね」
「言ってやるなよ。あの放送で邪魔立てしないのであれば此方も手出ししないとそう宣言したのは事実だからな」

ひと呼吸置いて。視線を移した青の瞳に不機嫌な色が浮かぶ。

「……それだけに十にも満たない数字というのは些か不愉快だ」

兄の呟きに笑みがこぼれる。

「じゃあ、思い知らせてあげないとね」
 
 
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