第五章



……にぃに。

僕のお兄ちゃん。

「だから」

本当は誰よりも優しくて仲間思いな。

「俺は」


……僕の家族。


「そっか」

その言葉が全てだった。

否定でも肯定でもなく彼がそう発言するまでに至った覚悟と意志を尊重した――

「……せないからね」

ぽつりと言った。

「え……」
「世界征服なんてさせないからね」

重ねて。

「負けないからね!」

今は納得できなくても。

少しずつ呑み込んで向き合おう。

「望むところだ」


――兄の選んだ正義(みち)と。


「リーダー」

電話を終えた直後。

「その」

情けない面。不安そうに狼の耳を垂れて訊ねるダークウルフに小さく息を吐く。

「心配すんな」
「ですがっ」
「俺が選んだんだ」

スピカは真っ直ぐ捉えて見据える。

「だから、ああ言った」

……強いひとだ。素直にそう思った。

彼のその言葉に嘘偽りはなく濁りのない意志はきっと未来を紡ぎ出してくれる。そんな過信ができてしまうほどに。
 
 
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