第五章
……まさか。
敵対部隊に所属している血を分けた実の妹にこのタイミングで電話をかけられるものだとは思いもしなかった。
「ああ、……うん」
スピカは狼狽気味に言葉を返す。
「……どうしたんだ?」
どうしたんだ、じゃないだろうに。
心の中で思わずつっこんだ。この状況で誤魔化しが利けるはずもないのによくもまあそんなことが言えたもんだ。
……なんて。本音は妹にだけは心配かけたくなかったのにな。
「あのね」
舌足らずな声が不安と躊躇いを滲ませてゆっくりと確かな言葉を繋ぐ。
「……見たよ。……放送」
ああ。
「そっか。そうだよな」
返す言葉も見つからなくて。
「……本気なの?」
答えるのに精一杯で。
「……うん」
それから暫くの間無言が続いた。
言葉に迷っているのだろう。集団を離れ壁に背中を預けながら寂しく目を伏せる妹の姿が容易に想像できるのが辛くて。
「にぃに、は」
ふと聞こえてきた声にはっとして携帯を耳に押し付ける。
「……どう思ってるの?」