第五章
小さく息を吐いて。
自身の置かれた立場を嘲笑うかのように薄い笑みを浮かべ呟いた。
「違いない」
亜空軍が動き出した――
それによって各地の部隊も突き動かされ大きな動きを見せつつある。これまではそれほど注目するような動きもなく彼と同じ話半分といったところだったが悪の組織を率いる双子の大々的な宣言により事態は大きく急変した。
……この世界は。
「お前は」
ロックマンはゆっくりと口を開く。
「怖くないのか?」
彼らしからぬ意外な質問だった。
「……仕事上」
ミカゲはマフラーを口元を覆い隠す位置まで引き上げて目を細める。
「不覚を取って己の死の瞬間を垣間見る場面も少なくはない」
思い返す。
「幾度となく回避し今に至るがそれでもあの瞬間に降りかかる恐怖と絶望は」
ほんの少し眉をひそめて。
「……簡単に拭い去れるようなものではないで御座るよ」
未来が迫る。
そして重なるその日まで。
同じ恐怖と絶望に揉まれながら。
……俺たちは。
「隊長は」
ばちっと現実に引き戻される。
「怖くないので御座るか?」