第五章



……。

「隊長?」

ぎくりと肩を跳ねた。

「どうかしたで御座るか?」


レイアーゼ中央司令塔四階。

フォーエス寮。


「いや」

取り繕う気にもなれず。そうは返したが尚怪訝そうに見つめるミカゲから逃れるようにして視線を背けてしまう。

寮内もいよいよ慌ただしくなってきた。報告の通り、上層部から司令が入ったというのもあるが現在放送の影響で国中がパニックに陥っているものでその対応に追われてんてこ舞いしているのだ。

「ミカゲ」

不意にその名を小さく呼んで。

「絶望の未来」

紡ぐ。

「お前はどう思う?」


……遠くない未来。

この世界は滅びの運命を辿ります。


突如として現れた少女は不穏な風に長い藍色の髪を揺らしながらそう宣言した。

初めは信じられなかった。どうして何の前触れもなく現れた正体不明の少女が近く歓迎式典を控えている戦士の卵ですらない自分たちにそんなことを。


世界だけじゃない。

貴方たちフォーエス部隊は――


「……話半分」

ミカゲは答えた。

「然れど隊長も気付いているはず」

ゆっくりと視線を上げて。

「……世界は」

大きく動き出しているのだと――
 
 
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