第五章



「ロックマン達が知っている未来は」

暫くして。

「その絶望の未来だけなの?」

安易な発言がまた彼を傷付けないように慎重に言葉を選んでルーティは訊ねた。

「……今のところは」

浮かぶ疑問符は直ぐに解消される。

「時間遡行の影響を受けた所為で彼女、ルキナの記憶は曖昧なんだ。少しずつ思い出してはいるが大部分である絶望の未来と称したそれ以外無理に思い出そうとすると頭痛に襲われるらしい」

ロックマンは続けて、

「例え彼女が思い出して他に起こり得る未来が分かったとしても公にはしないつもりだ。過去の改変により世界線にずれが生じると最終的に変えるべき未来に影響を及ぼして対処の仕様が無くなる」

ルーティは静かに息を呑んだ。

「……それって」

そして問う。

「他の誰かを犠牲にしたとしても?」

返す言葉に躊躇ったのか。ほんの少しの間を空けてロックマンは口を開く。

「……そうだ」


簡単に言ってのけられる問題じゃない。

正義を強く謳う彼にとって、この選択は辛く厳しいものがあっただろう。けれどこれは決して自分だけではない共に戦う仲間の命もかかっている。

……誰かを守る為に。自分たちが犠牲になったのでは意味がないのだから。
 
 
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