第五章
高らかに鳴り響く着信音。
「っ、もしもし!」
その電話の相手は一拍子置いて。
「もしもし」
……違う。
「無事だったみたいで安心したよ」
穏やかなこの口振りは。
「……ロックマン」
エックス邸。ルーティがスピカと連絡を取ろうとしていたその時、タイミングが良くも悪くも電話をかけてきたのはあのロックマンだった。
「ど、どうしたの」
スピカは謂わば敵軍の一員だ。その相手と今まさに連絡を取ろうなどとしていた事実が知れるはずもないのについ動揺が言葉に滲み出てしまう。
「何か不都合があったかい?」
ぎくりと。
「う、ううん」
ルーティは苦笑いを浮かべて。
「こんな時だからさ。皆も慌てちゃって何というか……落ち着かなくて」
唯一の救いはこれが携帯機器による声のやり取りだけで直接顔を合わせているという話ではないということ。でなければ今頃、ひんやりとした疑いの眼差しを向けられていたことだろう。
「そうか」
「ロックマンの方は?」
「此方もようやく落ち着いたところだ」
そういえば電話の向こう側が妙に静まり返っている。
「皆は?」
一応、訊ねてみる。
「電波ジャックの影響でエレベーターが使えなかったからな。今は司令塔の中を忙しく走り回っているよ」