第五章
「……それで」
クレイジーはすっと視線を向ける。
「うちの我が儘王子は一体何をしているのかなぁ?」
ダークシャドウの面々がその言葉に釣られて視線を向けた先。そこには壁に凭れかかって開いた携帯の画面を伏し目がちに見つめるスピカの姿があった。
「リーダー」
傍にいたダークウルフが視線に気付いて小さな声で知らせる。
「……お前も懲りないな」
別に期待していたわけじゃない。
元より自分の選んだ立場がどういったものか知っていたしだからこそ今この手に握られている現状が当然の結果であるということも分かっていた。
……ただ。
簡単には拭い去れないものもあって。
……言いたいことの一つや二つ、あったはずだろ。何を言われたってそれがお前だって認めて受け止めてやれるのに。
こんなことくらいで――
「おっ」
次の瞬間スピカは素早く携帯を操作して耳に当てた。
「電話するみたいだよ、兄さん?」
マスターは小さく息をついた。
「……させておけ」
目を細める。
「どうせ切れない縁なのだから」