第五章
世界の為なんだか自分たちの為なんだか何れにしてもあくどい方だ。
魅せるために。
全てを巻き込もうというのだから。
頭脳明晰、海内無双。生まれついた才能と湧き出る知識の行き着く先は必ず血を分けた双子の弟である創造神マスターハンドと狂気狂愛、双子の兄の為に破壊の限りを尽くす破壊神クレイジーハンド。
二柱の神が愛するのは。
世界に等しい双子の片割れのみ。
暇を弄ばせた神々の遊びだか何だか知れないが恵まれた能力を有意義に使えばこうも回りくどいことをしなくとも簡単に世界を支配できるものを敢えてそうしないのは生まれついてのそれなのだろう。
「――それより」
クレイジーはマスターから離れると腰に手を当てながら得意げに笑って。
「どう。似合ってただろ?」
おとぎ話に出てくるような王様の衣装を拵えた時は上手い言葉も見つからなかったが特別な日に普段と変わらぬ衣装というのも在り来たりだと今日この日になって拵えた衣装は驚くほど彼らの存在そのものにしっくりときている。
白い歯車の刺繍が施された黒い衣装。
ひと言で言ってしまえばそれで、だけど悪や邪なものと分類される彼らには失礼ながらこれまでにないくらいぴったりな衣装だった。
「お似合いです……クレイジー様」
「当然。僕と兄さんが考えたんだから」
クレイジーは普段の衣装よりか幾らか長い袖口を持ち上げてあざとく口元にあてがうと満足げに笑みをこぼして。