第五章
――レイアーゼ中央司令塔。
そこには、ある一室の撮影スタジオを半ば強引に貸し切って今回大規模な電波ジャックを行い世界中に向けて宣戦布告を果たした張本人がいた。
「終わったああああ!」
声を上げて直ぐ側の片割れに飛びついて擦りつく一人の少年。
「これって大成功だよね!」
「ああ。大成功だな」
「可愛かった!?」
「今日も可愛かったよ」
くすくすと笑って抱き留める少年の兄に部下の面々は小さく息をつく。
「甘やかすねぇ」
「お陰で仕事は増えそうですよ」
その様子を傍目に口々に話すのはダークフォックスとダークファルコだった。
「げぇ、なんでだよ」
「マスター様もクレイジー様も存分に煽っていらっしゃいましたからねえ」
途端に冷たく視線が刺さる。
「僕たちのやり方が不満なの?」
「いえいえ。近頃の人間ときたら平和に怠けすぎる傾向にありましたから」
ダークファルコは笑う。
「要するに感謝しているんです。頭を下げて命を乞えば助かると思い込んでいる脆弱ばかりで退屈をしていたので」
するとクレイジーは笑みを浮かべて。
「……そうだよ?」
マスターの肩に擦り寄る。
「物語には彩りがなくっちゃね。世界がくすんでしまうから」