第五章
新世界創造計画、か――
各自連絡を回すため行動に移る中ルーティだけはその場から動かず沈んだ表情で開いた携帯を見つめていた。携帯を操作して連絡帳を開きスクロールさせた先に気にかけていたその名前を見つける。
「……スピカ」
一年前。第一次新世界創造計画の真っ只中亜空軍所属の偽物軍団ダークシャドウを率いるリーダーとして立ちはだかった僕のたったひとりの幼馴染み。
戦うばかりじゃない。共闘もあった。
正義であれ悪であれ譲れない意志というものがあって現に彼も自ら望み、選んでそこにいる。
かつて互いに認めたことだ、でも。
「……、」
今このタイミングでかけたところで彼は電話に出るだろうか。この計画が遊びでないことは分かっているがそれでも侵攻状況に変化がない今だからこそ、此れが終わるまで聞けないであろう友の声を今の内に聞いておきたくて。
……かけてみるか。そう思い立ってルーティが電話をかけようとしたその時。
「……!」
阻むように。
携帯の着信音が鳴り響いた。