第五章
……選択権?
「簡単なことだ。難しい話じゃない」
マスターは続けて口を開く。
「前述の通り今度の計画に関わる意思がないのであれば“白煙”をあげてほしい」
白煙……
「それって」
ルーティは呟いた。
「敗北を認めろってこと……?」
彼らが言うのは白旗を掲げろというのと同じ。恐らくその代わりとなる白煙を上空から確認するつもりなのだろう。
「おっと。慌てちゃいけないよ」
クレイジーは悪戯に笑う。
「国の代表者さま。つまりお偉いさんが白煙をあげるかあげないか判断してね」
そうなるとレイアーゼの場合は最高指揮官基司令官が判断することになるのか。
ルーティは静かに息を呑んだ。今すぐにでも屋敷を飛び出して中央司令塔の司令室に駆けつけ彼らの思惑に乗せられては駄目だと叫びたいところだったが、白煙をあげて敗北を認めるということはこれまで守ってきた知識も栄光も全て彼らに受け渡すということになる。
……国のことだ。
それだけは絶対にしないだろう。
「知らなかったは聞かないよ?」
クレイジーはにっこりと。
「全国放送だよ。白煙あげなかった国は問答無用でぶっ潰してやるから――」
ニヤリと口角を吊り上げて。
「……覚悟してね?」