第五章
「っまさか!」
フォックスが声を上げた。
画面の中の映像は噴き出したそれがたちまち二人の少年を体を包み込んでしまうのを捉えている。そうして覆い隠すように渦を巻いていたそれは程なく映像が揺れるほどの強風を巻き起こし、そして。
弾ける。
「……!」
目を見張った。
黒い煙や霧が激しく飛び交いながら生成したのはどんな生き物とも比べ物にならないほどの大きさの――巨人。
低く唸るそいつは頭も体も全てその黒い煙や霧によって作り出されている。
巨人とは称したけれどその下半身は海に浸かっているのか映像から窺えるのは上半身だけ。それでもカメラの位置は変わらないまま巨人の頭部が直線上にあるのだからその大きさが知れている。
「嘘……」
突然の物音にルーティが振り返るとそこには床にへたり込んだリムの姿が。
「リム!」
駆け寄って案じるネロを差し置いて瞳を揺らしながら。
「……あの時と」
呟く。
「十五年前と同じ……!」
それは。
言うに堪えない灰色の記憶。
「……!」
眩む。
「ユウ?」
リオンが振り向く。
「大丈夫か?」
「……ああ。平気だ」