第五章
そうしてノイズが走り、砂嵐。直ぐさま映像は切り替わって島ひとつ見当たらない広大な海と薄暗い青空を映し出す。
と。カメラがゆっくりと振り向いた先に二人の少年を捉えた。空に並んで浮遊するその正体は間違いなくマスターとクレイジーである。
「じゃあ始めようか」
兄が呟き弟が頷いて互いに向き合い手を重ねる。互いの指を絡ませて繋ぎ、身を寄せ合って。カメラがズームをするとそのタイミングでクレイジーはマスターの肩口に唇を触れた。
いったい何が始まるのか。少しの瞬きも許さず映像に目を見張っていると。
そろそろと小さく口を開いた。八重歯が窺えた次の瞬間。
鋭利なそれを柔肌に優しく突き立てて。
突き破る。
噛み付いて喰らう。貪る。
弟の暴食にひくんと肩を跳ねて恍惚としたように薄ら笑いを浮かべる兄の右目から赤黒い涙が頬を伝いこぼれ落ちた。
呆気にとられる視聴者の側など差し置いて繰り広げられる狂気的な光景にやがて異様な形で変化が訪れる。
肩口。皮膚を破り血肉を晒したその奥から黒い煙や霧のようなものが湧き出る泉のように溢れ始めて。それは次第に質量というものを増して決して見間違いなどではなく目で見て明らかに。
そしてそれは。
マスターが天を仰いだのと同時。
勢いよく――噴き出す。