第五章
◆第五章『人間って愚かだよねえ』
そこは荒れ地だった。
建物は崩れ、かつて人の暮らしのために機能を果たしていた機器は倒れ折られて瓦礫の一部と化し静まり返っている。
誰もいない世界の中で何故だか自分一人だけ立ち尽くしていたのだ。ただ虚空を見つめながら。
灰色の空。灰色の雲。
不穏。
音が無い。敢えて言うなら吹き抜ける風だけが音だった。自分の呼吸音を確かめる為に大きく息を吸って吐き出してみたけれど何故か上手く耳に入ってこない。
酸素も得られた側から穴から抜けていくようなそんな奇妙な感覚だ。
ぱき、と。
自分は踏み出していた。今のはどうやら木の枝を踏んだ音だったらしい。
かつて在った街を飾っていたであろう建物は残らず崩れて瓦礫と化していた。
お陰で遠くまでよく見える。けれど何処まで見えたところでその地は瓦礫で構成されている。屑が何処までも何処までも果てしなく広がっている。
こんな世界で。
神様は何をしているんだろう。
ふと足下に煌めくものを見つけて視線を落とす。水溜まりだった。
風に揺られて歪む水面をじっと眺めて、それが落ち着いた頃。
赤と青の灯を見た。
それは確かに。
己が開いた双眸の中に――