第四章
これは、あいつの意志だから。
「僕からもひとつ」
ゆっくりと顔を向ける。
「ひと月前の第四正義部隊『フォーエス部隊』歓迎式典の詳細は知ってるよね」
あれは確か。式典の最中にダークシャドウが混乱を起こそうとして奇襲を仕掛けてきたんだったか。お陰で式典は中断、ニュースでも暫く話題になっていた。
そして何より。
忘れてはならないのは。
「疑っているのかい」
マルスは静かな口調で訊いた。
「……ウルフに聞いたんだ」
目を伏せる。
「ルーティが襲われたあの日。敵を撃ち抜いた手応えはあったのにダークシャドウの誰もその傷を負っていなかった」
ぎくりと。
「確認する前に治癒した可能性もある」
……まさか。
「何を見たんだい」
胸の内では心臓が静かに打っていた。
「……ミカゲ」
そしてそれは次第に。
「見えたんだ」
不穏なものを増して。
「袖口から」
大きく。
「右手首に包帯を巻いているのを」