第一章



す、と目の前に手を差し出された。

「あっ」

ウルフだった。

「ありがと……」

珍しいこともあるものだと思いながらその手を取って立ち上がる。

ふらっと体が揺らいで自分でも驚いた。すかさずウルフが受け止めてくれたもので真正面から転倒なんて痛い事態は回避できたわけだが。

「……!」

電気がついた。

「司令官」
「いい。私は大丈夫だ」

声に釣られてそちらを見た瞬間。

ぐらりと視界が揺れて。

「会場内にいる全員の安否を確認してくれ。式典は中止だ」

……眠くなる。

「ウルフ……」

ぽつりと呼ぶと頭の上にぽんと手を乗せられた。眠気が加速する。安心感。


「……が、やられた」

声が聞こえる。

「デタラメってわけじゃないみたい。出血も酷くて……」


遠く会話する声を聞きながら。

ルーティは深い眠りの中へと落ちていった――
 
 
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