第四章
足音が遠ざかっていく。
ロゼッタが胸に抱いていたチコをそっと見下ろして優しくひと撫でするとチコはふるふるっと小さく震えて、ロゼッタの腕の中から飛び立った。
そうして。きらきらと瞬く光の粒の尾を引きながら飛んだ先。
「行きましたよ」
星々を慈しむ温和な守り人。
扉の付近からは死角となり得るクローゼットの物陰。先程のチコが辿り着くなりくるくると回って光の粒を散らした。
程なく。おずおずと顔を上げたのはなんとマリオとマルスの二人である。二人は確かにこの部屋に逃げ込んでロゼッタに存在を庇われていたのだ。
「ありがとう」
マルスはゆっくりと立ち上がる。
「でも、どうして」
その質問にロゼッタは答えなかった。
或いは正しく返すことに躊躇いがあったのか。彼女はじっと口を閉ざしたまま、何処か儚くも見て取れる穏やかな表情で視線の先にいるマリオを正体を知ってか知らずか見つめ続けて。
「ロゼッタ」
不意に扉を叩く音に振り向いた。
「はい」
……この声は。