第四章
「……!」
今度はマルスがぎょっとした。
その人物は確かに長い藍色の髪が印象的だったが服装は西洋風で、自分の普段の衣装とよく似ていたのである。
指摘するべきでもない。人の好みというのは必ず何処かしら交えてしまうもの。
だとしても。
……この違和感は。
「ルキナ?」
パックマンが怪訝そうに呼んだ。
「……誰ですか?」
肌に触れた空気が痛い。ぴりぴりとしたそれは紛れもないその人の警戒意識。
嫌な予感がする。
「ぼ、」
マルスが答えようと口を開く。
「僕たちは」
「失礼しました!」
言い切らない内に咄嗟の判断でマルスの腕を引いて部屋から飛び出したのは言うまでもなくマリオだった。後に引けない不審な状況に妙な焦りを募らせながら、マルスの口から次の言葉が飛び出す前に目に付いた扉を開いて飛び込む。
そうして飛び込んだ部屋の扉を閉めて二人背を預けながらズルズルと座り込んだが直後に扉の開く音が遠く聞こえた。
自分と瓜二つの顔の男。
今までと全く雰囲気の異なる女性。
何か知っている。
「……!」
聞こえていた足音が扉の前で止まった。
良くない動悸に息苦しさを覚える。硬直して動けない二人をからかうようにして今度別の影が頭上に差した。