第四章
返事はすぐに返ってきた。
パックマンはちらっと二人を振り返って顎でしゃくる。
「……お邪魔しまーす」
すうっと鼻を通る安心と不安そのどちらもを兼ね備えた消毒液の匂い。ドクターという役職丸分かりな主に相応しくその部屋の家具は白や銀といったおとなしい色で統一されており部屋奥の棚の中には薬が並べられていて。
「また薬の調合でもしてたのかよ」
などとパックマンが訊ねたわけだが見るからにその人は藍色の髪の人物を前に診察中でありペンライトを胸ポケットに仕舞うとひょいと顔を覗かせて。
「見たら分かるだろ。仕事中だ」
……え。
マリオはアイガードの奥で目を開いた。
特徴的な大きな鼻に黒い髭。
まん丸とした顔の形もその目もその髪も全て。見間違えるはずがない。
……あれは……自分、なのだから……
「異常はないみたいだな」
その男ドクターは目の前の人物に診察の結果を告げる。
「ただもう少し夜更かしは控えろ。目に疲れが出てきている」
「はい……ごめんなさい」
藍色の髪の人物は肩を竦めて謝ると椅子から立ち上がった。そうして振り返った後でようやくその場に立ち尽くしていたマルスとマリオの存在に気付く。