第四章
……次の部屋は。
「合言葉」
「えっ」
陽だまりの中の小さな冷徹。
ほんの少し開いた扉の隙間からじとっとした視線を向けるのはハルである。何をご所望なのかと思えば目と目を合わせた瞬間の第一声がこれ。
「知らないんだ」
まるで心の奥の何もかもを見透かしたかのような眼差しをじっと向けながら。
「バトレンジャーなのに」
うぐっ。
「分からないんだ」
その後ろでぽつりと呟いたパックマンはししっと薄笑いをして。
「パックマンも知ってるのに?」
おぉう。
「あんたリーダーでしょ」
「そりゃ設定の話だ」
今度もロックマンは黙ったまま特に突っ込むつもりもないらしい。こういうのは馬鹿なことを言うなと少し諭すだけでも状況が変わってくるというのに。
まずもって当てずっぽうは良くないな。パックマンはともかく子供はこういうのよく覚えてるし。
「合言葉」
催促するハルに痺れを切らして。
「……えっと」
「正義の鉄槌が悪を裁く」
ぽつりと。
「合言葉は」
それまで黙っていたマルスが機敏な動きで顔を左手のひらで覆い中指と薬指の間から右目を覗かせて叫ぶ。
「悪即斬!」
……。
「入っていいよ」
ええぇ……
「なんで知ってんの」
「ロイがヒーローオタクだから……」
「てかポーズ必要あった?」
「うるさい」