第一章



「ぁ、ぐ」

くぐもった声が口から洩れた。

布だろうか――背後より首に回され絞め上げられたのである。

「……っ」

今度は声にならない。

苦しい。きりきりと絞め付けてくる。息が。

誰がどうしてこんな真似を、など考えている余裕もなかった。

巻き付いた布に手を掛けて引き剥がそうとする、が、更に強く絞め上げられ上手く指が潜り込めない。

……次第に頭もぼうっとしてきて。酸素不足というやつだろうか。

誰の仕業か知らないが、やられてたまるか! こうなったらとパニック覚悟で腕に電気を走らせた。放電すれば、引火して焼き払うことが出来るはず――


けれど。


ぱちっと小さく音を立てたが最後、消失。

……何も感じられない。手遅れといった問題ではなく放電ができない。

「っか」

犯人が真後ろに居るなら肘や足で抵抗が出来たのだが……ぐいと引かれた布は天井から吊るされたもののようだった。相手は当然、殺すつもりなのだろう。

尚も引かれ、爪先立ちに近い状態となった。

……力が入らない。
 
 
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