第四章
「おや」
リンクが声を上げた。
「『アラベスク』ですか」
「上司に勧められたもので」
「この著者の作品は良いものですよ」
二人が話している隙に視線を走らせると直ぐにそれは見つかった。向かって右の本棚の手前に四角い扉がぽつりと。
ロボットなのだから充電式か或いはオイルを切らさず補充していれば二十四時間稼働するものかとも思ったがあれが彼の寝床に通じているのだろう。
「この部隊の方針についてお伺いしたいのですが……」
カービィはちらっと二人を視界の端に捉えるとそっと扉に近付いた。ドアノブに手を触れて捻る。
そのまま、ゆっくりと引くと隙間から薄暗い室内が窺えた。続けて捉えたベッドの上に何かがぽつりと置かれている。
……あれはなんだろう。
「コスモピンク」
ぎくりとした。
「だよねぇ」
振り向くとそこにはパックマンがいた。
彼も同行していたことをすっかり忘れていたのである。カービィはゆっくりそちらに体を向けながら後ろ手で静かに扉を閉めた。
「パックマン知ってるよ」
じっと見つめる瞳が捉えて離さない。
「お前……」
ドクンと心臓が跳ねた。
「男の娘だろ?」
……。
「確か男を惹きつける特殊なフェロモン持ってて、男でそれはまずいってことで女の格好してるとかだっけ」
ししっと笑って。
「そういうの好きだよ。だから」
思わず身を引いて目を見張る。
「サインください」
本当なんなんだこいつら。