第一章
わあっ、とまた会場内がざわめきを起こした。
さすがに戦場の味を知る彼らなので大パニックとまではいかないが比べていくらか話し声も目立ち、緊張が走る――その最中、二発目の銃声が鳴り響いて。
「わっ」
どんと不意に誰かが背中にぶつかりルーティはよろめいた。その時誤ってグラスを手放してしまい、床へと放られたそれは緊張の糸張り詰める会場内に。
――高らかに。
しまった火に油を注いだ。警戒心が棘を模して四方八方から突き刺してくる。
「……った」
破片で手が切れてしまったようだ。こぼれたワインが傷口に触れたらしく、染みてじんと熱くなった。せっかくの歓迎式典だというのに、散々だ。
滅入ってる場合じゃない。犯人が何処に身を潜めているかも分からない。
ウルフなら。まだ新しい硝煙の匂いを辿って――
ぬるり。
……声こそ出なかったが。
確かにぬめついた、厚みのある温かなものがうなじを撫でたのだ。
さすがのルーティもぞっとして手をやった。まるで、化け物の舌に舐められたかのような不愉快極まりない感覚――