第三章
靴音が遠退く。……扉が閉まる。
ダークファルコはそれを傍目で見送ると小さく息をついた。
全くなんて無茶をしてくれるのだろう。いくら第一に想い慕う相手があんな状態だったからって物事には優先順位というものがあるだろうに。
「……ウルフ」
と言う間に。
「リーダー!」
ダークウルフは叫んで駆けつける。
「ぅ、けほっ……の、馬鹿……」
膝をついて抱き起こしたその人は小さく咳き込み力なく睨みつけて。吐き捨てた台詞も普段のような勢いがない。
「っはー、冷や冷やさせやがって」
ダークフォックスは気怠そうにこぼして立ち上がり膝に付着した埃を払う。
「全くです。ウルフ。ああいった行動は控えてください。何をしても何があっても連帯責任なんですから」
ダークファルコは呆れた顔で諭す。
「いや……何も言うな。ウルフは双子の命令より俺の我が儘を優先してくれた。こうなるだけで済むなら安いもんだ」
スピカは重く息を吐き出して。
「……いつまで持ちますかね」
ダークファルコが呟いた。
「我々がリーダーを慕って頑なに戦闘を拒もうが対する正義の構えは釈然としている。近年という話ではなくそれが最も正しい正義と悪の形。ならば我々も」
スピカは静かに眉をひそめる。
「本来あるべき形に従って対峙するべきではないでしょうか――」