第一章
ふっと会場の全ての電気が消えた。……ざわつく。
「なんだこれは?」
アレスレッドは怪訝そうな声を洩らした。
「何かの演出ですか?」
「そんな予定はなかったはずだが」
どうなっている、と司令官がSPの男に聞いたようだがさっぱりだった。
真っ暗闇の中では声だけが頼りだ。
「……ウルフ」
静かに呼ぶ。
彼なら夜目が利くだろう。
「チッ」
人が多すぎると言いたいのだろうか、ウルフは舌打ちを返した。
加えて、その人というのも大体が戦士の類なのだから警戒に紛れてそれらしい気配まで探れないのが難点だった。何もないならそれでいい。単なる停電なら――
けれど程なくして。
乾いた音が鳴り響いた。
「っ、」
直後ぱりんとグラスの割れる音は。
ルーティのすぐ、目の前で。