第三章
その瞬間、ぎくりと。心臓の音が跳ねたのは――間違いじゃなかったと思う。
「お二人の望みはこの世界を争いのない平和で幸せな世界にすること……」
女性は恍惚と胸に手を置く。
「その為にこの世界に巣食う邪な人間を裁いてくださってる。悪だけじゃない、正義の皮を被った狡猾で愚かな人間も」
そうして語られる最中ぱっぱと浮かび上がった映像のそれはどれも彼らが讃えるような美しいものではなかった。
……違う。
「自分たちは違うとでも?」
男は冷笑する。
「どうせ助けられないくせに」
動悸。
「正義を謳ったって讃えたって」
男は自嘲気味にこぼしながらおもむろに死角となっていた木箱の影から一丁の拳銃を取り出すと構えながら。
「未来も何も変えられないくせに!」
――僕たちは。
響き渡る破裂音に目を開いた。
発砲は許されないまま。男の手から打ち上がった拳銃が構造を無視して膨張し、破裂する。一方で男は寸前に伺えた暗い青紫色の靄のようなものに弾かれたのか大きく仰け反ると床に倒れ込んで。
すかさず女性が駆け寄るその光景を目に我に返る。発言に感化されたのか興奮状態に駆られ次の攻撃を構えつつあるその人を慌てて振り返りルーティは叫んだ。
「やめて、マーク!」