第一章
真面目な人だなぁ。率直にそう思った。
確かに、父さんがどれだけ凄い人なのかは分かる。あの人自身の犠牲があったとはいえ、結果としてこの世界を守り抜いた。
――首謀者であるマスターとクレイジーを生かして。
そういえば、最近は彼らの動きがさっぱりだな。度々ちょっかいをかけに来ていたものだが、ふっと手を離れられたのでは安心する以前に気にかかる。悪口のようで申し訳ないが人間観察と研究、実験以外にやることのないニート同然の彼らだ。
その彼らが姿を見せないとなると、いい加減探りを入れた方がいいような……
「ルーティ」
ビクッと肩を跳ねて現実に引き戻された。
「時間も押しているからね。私は失礼するよ」
「あ、はいっ!」
ついついぼんやりしてしまった。何か重要な話を挟んでなければいいのだが。
「司令官。今日はわざわざ足を御運びいただき、ありがとうございました」
ロックマンが頭を下げた。
「君も頑張りなさい。活躍を期待しているよ」
そう話している間にゴツい見た目に黒服サングラス、と何ともベタなSPらしき男二人が司令官に歩み寄った。その内の一人が耳打ちをすると司令官は頷いて返し、ちょうど通りかかったウェイターに持っていたグラスを手渡す。
「それでは――」