第三章
――その言葉の意味を理解するのにそう時間はかからなかった。
「私たちの町だけじゃない。きっと誰も知らない海の向こう側の小さな国だって同じ問題を抱えてる」
女性は顔を上げた。
「あなた達の言う“いつか”っていつ?」
「……それは」
「その日を迎えるために、後どのくらい待っていればいいの?」
口を噤む。
「助けに来てと嘆いているのじゃない。でもこの国を知って驚いた。こんなにも幸せそうでこんなにも文化が進んでいて悪を知らない万全で」
ひと呼吸置いて。
「この世界にはこんな国もあるんだって……そう思ったけど違った」
マークはじっと黙っている。
「未来と平和を願うその姿勢は初めから終わりまで自分たちの為にあって。他の国の内情なんか目もくれない……」
「っ違う、僕たちは!」
「いい加減にしろ!」
ルーティは思わず肩を跳ねた。
「……戦ってきた、か?」
目を開く。
「それで本当に救えたのか?」
男は自嘲気味に鼻で笑い飛ばす。
「どうせ気休めだ。日を置けばまた元の日常に戻るとも知らずに」
鋭く睨んで。
「同じことの繰り返しだ。感謝して報酬やってまた日を挟んで助けてもらって……根本的なことは何も解決していない。それよりもだ。お前たちが独り占めしている国の知識を全て平等に与えていれば事前に防げたことじゃないのか?」