第三章
男は眉をひそめた。
「……お前たち」
どうやって、と聞こうとして。
「驚いたかい?」
疑問は解消される。
「下の階で拘束していた人質だな」
男は目を細める。
「すり替わっていたのか……」
「詰めが甘かったようだね」
視界の端。僅かな動きを捉えて。
「――ッッ!」
ズボンの尻ポケットに潜めた銃にほんの少し手を触れた次の瞬間、阻むように青い閃光が男の手と銃の間で火花のように弾け飛び銃が床を跳ねて転がった。
「ごめんね」
ルーティはひと言。
「素直に人質を解放してくれさえすれば悪いようにはしない」
続け様。
「戦いたくないんだよ!」
「は。どの口が言ってくれるんだ」
対して男は見下げた態度で。
「お前たちの計画のことは初めから全てお見通しだ。逆らう面倒な輩はさっさと殺して事件を揉み消す」
ぎくりとした。
「いつだって世界の為だと抜かしながら未来も平和も独り占めにして」
違う。
「本当に救われているのか」
違う。
「自分たちだけじゃないのか」
頭がずきずきと痛む。
「それがお前たちの言う正義なのか?」
脳裏にフラッシュバックする。
雨音。裂く音。血の匂い。吐き気のする現実に目眩のする真実に僕たちは。
「本当に正しいのか?」