第三章
……靴音が響く。
注意喚起のつもりでああは言ったが実際そうだった場合洒落にならない。諦めてウルフ達と合流するという選択もあっただろうが、その時になれば自分が前線に立って突破口を作ろう。相手が機械なら微量でも電気には弱いはずだ。……
「しっ」
ルーティはすかさず人差し指を立てた。それはもうすぐ階段を上り終えて、次のフロアに着くといった頃。
声が聞こえたのだ。自分だって獣人の類なのだから普通の人よりは聴覚が鋭い。
それよりも。ルーティはちょうど半開きだった鉄製の扉を背にしてそっと顔を半分ほど覗かせるとフロア全体に目を走らせた。木箱が所々散らかったフロアにはどうやら防犯設備など無いらしく先程のフロアと比べ安全であることが窺える。
そして捉えた。
一人の男が木箱の前に座り込んだ女性を見下し喋りかけているのを。
「……どうする?」
マークが冷静に訊ねたが。
言わずとも。
「その人から離れて!」
飛び出すと同時に叫ぶと男は目を開いて此方を振り返った。
状況は有利、どうやらデモ団体の一員と思しき人物はその男ただ一人らしい。