第三章
マークは指先に小さな火を灯すと両手を縛る縄を焼いて千切った。実はあの時スタンガンによるショックで体内の電気を放出させられてしまっていたのだ。
それが全てというほどではないが自在に操って火を起こしそれで縄を焼けるほどではない。マークもトーナメントで見た時は剣と魔道書を使った戦闘を主にしていたかのように窺えたのだが、今のは。
「――僕は妹より魔法が得意なんだ」
マークは答えた。
「だから魔道書を取り上げられても中級まで扱える」
「ど、どうやって」
聞くと彼は振り向き自分の頭を人差し指でとんとんと叩くのだから――自分には到底彼の真似はできないと思う。
「さて」
マークは手をはたいて腰に当てる。
「加勢と探索、どっちにする?」
先程の男たちの会話から此処より下の階で何かあったのは確かだ。
……迎え討つとも。あの場に置いてきたウルフ達が不覚を取るはずもないしいざとなれば自己判断で対応する。あの場は彼らに任せるとして気になる点がひとつ残されていた。
「僕たちは上の階に行ってみよう」
続けて、
「人質の安否が気になる」
「僕も同意見だ。さ、行こう」
ルーティは頷いて応えるとマークと共に上の階へ向かうことにした。