第三章
「……ルーティ?」
呼ばれて、凝視していたことに気付く。
「あ……あはは。何だっけ」
ルフレは怪訝そうに見つめていたが。
「……ああ!」
彼の持つ疑問に気付いたのか。
「僕だよ、ルーティ」
髪を押さえて持ち上げる。
「……あっ!」
思わず声を上げて、驚いた。
まさか彼女がルフレではなくウィッグを被っていただけのマークだったなんて。
「な、なんで」
ルーティは茫然とした表情で。
「彼らは女性だと思って捕らえた。逆に残してきた側は僕、即ち男性だと思っているはずだ」
口元に笑みを浮かべて。
「つまり今の彼らの頭の中で人質としてこの部屋に残してきたのは子供と女、となっているんだよ」
いいかい、と続け様。
「ただの小さな計算のズレが戦局に大きな影響を与える。それが狙いだよ」
ルーティは感心したように声を漏らす。
「全然気付かなかった……」
そういえば彼らは突入してからひと言も声を発しなかったような気がする。
「驚いたかい?」
「う、うん」
敵を欺くにはまず味方からと言うが。
「これも策の内さ」
得意げに告げるマークに。
「よい武器をお持ちで」
そう言ってルーティはにやりと笑った。