第一章
◆第一章『あなたを歓迎します』
「ウルフの馬鹿!」
冒頭からごめんなさい。急いでるんです。
「なんでもう少し早く起こしてくれなかったのさ!」
わたわたとシャツの袖に手を通すのはX部隊のリーダー、ルーティ。
「起きなかったのはてめえだろ」
そして正論を返すのはそのパートナー、ウルフ。
「三十分ごとにアラーム鳴らしやがって」
ぎくり。
「俺様が起きて、なんでてめえが熟睡なんだ」
返す言葉も見つからない。
ははは、と苦笑いを浮かべてルーティは着替えに専念することにした。
ウルフはもちろんルーティも、今日ばかりは普段着とは異なる。
正装と言えばそうなのだがネクタイを締めて凛々しく、ではなく司令塔から予め支給された制服を着るのだ。それというのが何処ぞの魔導師が着るようなローブと、警察官の被るような制帽で色合いも八割が黒。申し訳程度に白の刺繍を縫ってあるが、それにしたってこれは街中を歩くには少々どころか目立つに違いない。
「終わったのか」
「とりあえず」
普段着と違ってこの衣装は重くて動きづらい。
これから司令塔に行くと考えただけで荷が重いのに――