第三章
……振動。
「ぅ」
それは微弱ながら床から伝わってきた。
重い瞼をゆっくり半分開いて。首後ろがまだじんわりと痛むのを感じながら自分は気絶させられたのだったなんて自身の置かれた状況に反し漠然と。うっすらと硝煙の匂いを感じながら身じろぐ。
……縛られている、か。
「坊主と女は?」
そんな声が聞こえてルーティはすかさず瞼を閉じた。直後にライトで照らされたが直ぐに逸れた辺り誤魔化せた様子。
「……ぐっすりか。呑気なもんだぜ」
男たちの声が聞こえる。
「連中が動き出した」
「状況は?」
少しの間があって、
「迎え討とう」
「あれを使うのか?」
「今使わなくていつ使うんだ」
声が、靴音が遠ざかる。ルーティは瞼を開くとのそりと体を起こした。
両手はお馴染み後ろに回された上で縄で括られている。少し体を動かしてみたが発信機のようなものは付けられていないようだ。さっきの微弱な振動と男たちの会話から此処は三階よりもっと上の――
「行ったみたいだね」
声に気付いて振り返る。
「ルフレ」
どうやら彼女も目覚めていた様子。
「起こす手間が省けたよ」
……それにしては。
「僕たちも動こうか」
声や口調が……違うような……