第三章
程なく、落とした銃や剣が床を打つ音が静かな空間に鳴り響いた。
「その本もだ」
男に素早く指摘されて躊躇うばかりだったマークも眉を寄せながらようやく魔道書を床に落とす。……ルフレを捕らえた男の他にも銃を構えている男がいた。
誰もこの依頼を受けて出撃した味方部隊であるはずなのに。思考を巡らすまでもなく可能性として最も高いのは。
今回の作戦は既に外部に漏れ出しデモ団体の一員が部隊を偽って紛れ込んでいたということ。
そしてその目的は紛れもない。
「ルーティ・フォン」
男は静かに名前を呼ぶ。
「お前を人質として要求する」
この世界を救済した国の要である特殊防衛部隊X部隊のリーダーを人質に使った司令塔本部への交換要求――!
「……、」
ちらっとウルフに視線を遣るとここでも視線だけ返された。けれどこればかりは言わずとも。
「俺はそう気が長くない、早くしろ!」
男は声を荒げる。
「この女がどうなってもいいのか!」
人質にとったルフレのこめかみに銃口を押し付けて脅す男にルーティは緩く拳を握り締める。ここから返す策はいくらでもあるが任務の移動が為されてない以上今は彼らに従った方が良さそうだ。
「……分かった」
静かに答えて。
ルーティはゆっくりと足を踏み出した。