第三章



ルーティはウルフを見上げた。けれど彼はひと言も発することなくただちらっと視線を返しただけで。

「最近まで住んでいたんだと思う」
「……! デモ団体の連中が?」
「それは分からない」
「似たり寄ったりじゃからのう」

確かに粗方片してはあるがちらほらと葛が床に落ちている。やっぱりデモ団体はたまたま此処に立て篭もったのではなく計画して僕たちを誘い込んで――


「動くな」


冷たく響いたその声に。

水を打ったような静けさが訪れた。


「……!」

振り返ると何故か味方部隊であるはずの男の一人がルフレを捕らえそのこめかみに拳銃の口を突き付けていた。予想だにしなかった突然の展開に誰も言葉を失い硬直している。

これが冗談ならなんて趣味の悪い……

「何をしているんだ、銃を」


グラヴァスの言葉を遮ったのは。

人の声ではなく――銃声と実弾だった。


「動くな」

額の中心を撃ち抜かれ血を噴出しながらゆっくりと後方に倒れかかるその人が視界の端に映り込むその最中で男は言葉を重ねる。早い証明に今度こそ、誰も体が動かなくなった。

「武器を出せ」

不安による動悸が思考を蝕む。

「全部だ、さっさとしろ!」
 
 
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