第三章
……視線を背けそうになる。
「応じないのであれば止むを得まい」
グラヴァスが言うと各部隊の戦士たちがずらりと横並びになって構えた。
「拘束せよ!」
腕を払うのと同時。
駆け出す戦士たちに出遅れて、いやルーティは立ち尽くしていた。出遅れたのではなくただ返す言葉が見つからずに。
「うわあぁああっ!」
距離が迫り慌てた彼らの銃口は明後日の方向を向いて壁を天井を貫く。わあわあと騒ぐ声の最中それでもルーティは眉をひそめて動けずにいた。
「拘束完了しました!」
「残りの連中は三階フロアへ向かえ!」
指示に従って駆けていく戦士たち。
「何をぼさっとしとるんだ」
足音が遠く。
「これ!」
不意打ちで頭を叩かれた。
「え、えっと」
「ワシらもゆくぞ」
三階フロア。
「……?」
抜けてきた階に反して電気も点いている明るい空間だった。白いタイル張りの床と窓にかけられたカーテンはほんの少し埃がかかっている程度で。
「臭うのう」
シラヌイが呟いた。
「確かに……」
「何が匂うんだ?」
訊ねるファルコにフォックスは腕を組みながら答える。
「……人の匂いだよ」