第三章
一階奥の階段を駆け上がる。
次に迎えた二階フロアは所々バリケードと成り得る横長の机が散らばっていた。潜んでいるとすれば。
「……!」
銃弾を撃ち込まれたのはすぐ側にあった机の角だった。その刹那。
「ルーティ!」
フォックスが叫んだのと同時目の前に飛び出したのは二つの黒い影。その正体がマークとルフレであると認識するのにそう時間はかからず。かと思えば彼らが魔道書を片手に突き出した手のひらの正面金色の魔方陣が大きく展開されて。
「くっ」
大きな暴発音に弾を撃ち込む音、火花。
攻撃をされたのは確かだ。それによる地響きと振動が体の奥にまで伝う感覚――けれど実際攻撃が届かなかったのは無論マークとルフレの展開した魔方陣のお陰だった。それが銃弾、砲丸の全てを受け止めて知れぬ空間へと通している。
「――諸君に告ぐ!」
グラヴァスはその後ろで声を上げる。
「攻撃を中止し、投降せよ!」
「……そちらの要求には応じない!」
男の一人が遅れて返した。
「我々はッ! レイアーゼ国のみならずこの世界のために発展を願う!」
止まない攻撃の最中。
「……未来は」
男は叫ぶ。
「レイアーゼのためだけにあるのではないッ!」