第三章
……武器を。
ルーティはゆっくりとビルを見上げた。七階建ての寂れたそれは正面からはその構造を正しく窺えない。恐らくはひとつひとつの階が奥に広く重火器を扱うにはもってこいなのだろう。
それにしても。
「司令塔から連絡は」
「いえ、まだです」
顔を顰めるグラヴァスを傍目に。
……武器を予めビルの中に隠しておいたなんて話いくら何でも都合が良すぎないだろうか。それもまるで今回の作戦が筒抜けだったかのように。武器だって。
「市民に混乱を招いています!」
グラヴァスは目を閉じた。
「……突撃だ」
静かに息を呑む。
「人質を取られているが止むを得ん」
「背に腹は変えられないですね」
フォックスが頷いた。
「――デモ団体は武器を持っている!」
密かに拳を握り締める。
「情を持つな!」
「はいっ!」
「決して気を緩めるな!」
「はいっ!」
グラヴァスは声を張り上げた。
「正義を掲げよ!」
始まる。
「――全ては」
意志を宿した眼が燃ゆる。
「我が国の未来の為に!」