第三章
……何の前触れもなく。
ダークウルフの頬を光線弾が掠めたのはその直後だった。
「邪魔立てをする気か」
ダークウルフは静かに問う。
「正義部隊」
「無論」
ロックマンは即答した。
「悪に加担するものはもちろん悪だ」
鋭く見据えて。
「なら。悪に制裁を下すのは我々正義の役目というものだろう」
「正義のために血で汚すの?」
「人を裁いていいのは同じ人だけだ」
ダークフォックスは笑った。
「なんだそれ。あいつさりげなく俺らのことディスったくねぇ?」
「中傷表現ですか」
くすくすと。
「……如何なさいましょう?」
先程から口を閉ざすばかりのスピカの視線の先にはルーティの姿があった。何を思うのかはさておき一切の攻撃を命じることもなく小さく息をつき。
「撤退する」
「待ってました……って、ええぇ!?」
ダークフォックスは振り返る。
「多勢に無勢と見ましたか」
「……いや」
その時初めて視線を背けたスピカに。
「お優しいですねぇ」
「いや意味分かんねえってリーダー!」
「リーダーが決めたことにいちいち文句つけんじゃねえッ撤退だ!」
ダークウルフは腕を打ち払う。
「……させないよ」