第三章
……靴音が響く。
時たま人とはすれ違うが目的のそれとは異なっていた。階段で軽薄な笑い声を上げながら煙草を吹かせる明らか未成年の集団も見かけたが興味に値しない。
デモ団体。そろそろ自分たちでなくとも他の部隊が遭遇していい頃合いだが……
ある境に踏み込んだ、その時だった。
「……!」
全員が揃って足を止めた。……いや、歪な気配に竦めたといった方が正しいか。
冷たく変わった空気がずんとのしかかり胸を打つ。肌に突き立てられる牙に似たそれの正体を、自分たちは知っている。
――殺気。
「上だ!」
ロックマンのひと声で拘束は解かれた。
「っ、!」
音高らかに足下へ連続して撃ち込まれる銃弾。――マシンガンだ。けれど銃弾は的であるはずのルーティ達をあからさまに外して地面を叩き砂塵を巻き上げた。視界を妨げて、染みる。
思わず咳き込んだルーティに、すかさず本命の銃口が向けられた。
「ルーティ!」
銃声が鳴り響く。
「……おや」
その現場を見下す少し離れたビルの上。アサルトライフルを担いでいた男はとぼけた声を漏らして構えを解いた。
「逃げられたか?」
「まさか。こう見えて、腕はいい方なので」
その傍らの別の男は眉を顰める。
「ああ、油断しないで」
砂塵。突き抜けて、何かが飛び出した。
「……来ましたよ」