第三章
どんな姿だった、って。
「……僕より少し高いくらいの背丈で」
ルーティはゆっくりと語り出す。
「マスターは青い髪と目の色をしてる。クレイジーは赤。最初に言ったマスターの方には左目と左腕が無くて、それとは反対にクレイジーは右目と右腕が無い」
脳裏に焼き付いて剥がれない他の誰より特殊な容姿。子供の姿と侮れない想像を絶する創造と破壊を司る能力。
今はまだ裏世界亜空間にひっそりと息を潜めるだけの他ならぬ悪の存在。
二柱の神。狂愛の双子。
マスターハンドとクレイジーハンド――
「……そうか」
そこまで語るとロックマンは腕を組んで黙ってしまった。
「急にどうしたの?」
「いずれは戦うことになる相手だ。敵として姿形くらい把握しておきたくてな」
……敵、か。
「どうしたんだい?」
マークに訊かれて慌てて首を振る。
「何でもないよ」
一年前。全世界を脅かした亜空事件、基タブーとの戦いを終えてからというもの彼ら含む亜空軍からは目立った攻撃を仕掛けられていない。悪夢の三日間という例外があったにしてもそれを除いてしまえばこの一年間互いのやり方を認め合う仲だったかのように思える。
……コミュニケーションについて拘りを持たず何となくで接したというだけの暇潰しなら話は変わってくるのだが。