第三章
「……時間だな」
グラヴァスは時計を目に呟いた。
「出発!」
扉を開き、建物を後にする。
「皆、気が抜けているな」
フォックスは歩きながら呟いた。
振り向くと自分たちに続けて他の部隊がぞろぞろと。けれど誰も緊張の糸が張り詰めているというよりはさっさと片付けますかといった具合で第一級任務とは何だったのか至極リラックスしている。
もちろんそのくらい気持ちを緩めていた方が接触に成功したとして説得を試みるのでも妙に攻撃的な発言となってしまい相手が逆上して最悪の事態に、といったことも避けられるのだが。
「ちゃんと依頼届見たのかなぁ……」
「見ていると思うわ。でも安心してる」
ルフレはルーティを振り返って。
「何故だと思う?」
「ええっと」
「君たちがいるからだよ」
代わりに答えたのはロックマンだった。
「この世界を救ってきた英雄部隊が味方についていて何を恐れるだろう。どんな困難な状況であれ存在が励みになる」
ふっと笑って。
「要するに頼られているんだ」
「そ、そうなの?」
「そうとも。だからこそ君たちは今ある彼らの心の状態に呆れるのではなく先陣切って導くべきだと俺は思うよ」
流し目に見ながら。
「君たちの正義は強いから」
……先を歩いていくロックマンの背中をルーティは惚けた顔で見つめて。
「しっかりしてるんだね……」
「寝癖がなければ完璧なんだけどね」