第一章
己が正義こそ正義であると信じてやまない連中だ。それ以外は悪でしかない。
……無論、仇なす連中も。
ちょうど二週間前メタナイトの言った台詞が頭の中で再生された。その時ぼんやり思った“異なる正義もそれに含まれるのでは”という予測も、今の発言からあながち間違いではないのかもしれない。
「現在、我が部隊の隊員は十七人」
少年は続けた。
「世界を正す目標を達成するには乏しい数です」
ウルフは密かに目を細める。
「時として、先人の方々には手を借りる場面もあるかもしれません。より正しく、より豊かな世界へ。共に道を切り開き、愛する我が国に」
話の途中で少年は近くの円卓のグラスを手に取った。
「――光ある未来を」
方々がグラスを手に立ち上がるのを見て、ルーティはいつの間にやら頬杖をついていたウルフを肘で小突くと周りより少し慌ただしく立ち上がりグラスを持った。
「お待たせ致しました。司令官、乾杯の音頭を」
合図を受けて司令官はふっと笑い口を開く。
「では。新たな戦士の誕生とこれからの活躍を祈って」
グラスを差し出す。
「乾杯!」